応募者への連絡をテンプレート化したところまでは良かったのに、なぜか面接前に辞退が増えた。あるいは、返信が短く素っ気なくなっていく。そんな感覚を持ったことはないでしょうか。内容は間違っていません。日程も条件も正しく書かれています。それでも候補者の温度が下がる。
原因は、文面の「トーン」にあることが少なくありません。事務連絡として完璧な文章は、受け取る側からすると「機械的に処理されている」と映ります。逆に、親しみを出そうとして崩しすぎると、今度は「この会社は大丈夫だろうか」という別の不安を生みます。ここでは、文面全体を書き直すのではなく、4か所だけを整えるという現実的な方法をご紹介します。
事務的な文面が「距離」を生む理由
候補者は応募の時点で、その会社のことをほとんど知りません。求人票と、届いた連絡文。判断材料はその程度です。だからこそ、文面の温度が「その会社の人の温度」としてそのまま受け取られます。
よく見かけるのは、次のような文面です。
件名:面接日程について
応募者各位
この度はご応募いただき誠にありがとうございます。下記日程にて面接を実施いたしますので、ご都合をご記入の上ご返信ください。
9月29日(月)10:00 / 14:00 9月30日(火)10:00
以上、よろしくお願いいたします。
何も間違っていません。ただ、この文面には「あなたに向けて書いた」という手触りがありません。候補者は複数社に応募していることが多く、同じような文面を何通も受け取っています。その中で、自分に向けられた一通かどうかは、思いのほか強く記憶に残ります。
一方で、距離を縮めようとして「〜ですね!」「お待ちしてます〜」と崩しすぎた文面も見かけます。これは年齢層や職種によっては軽く見られ、条件面の説明まで信用されにくくなることがあります。硬すぎても崩しすぎても、結果として候補者の不安は残るのです。
候補者体験そのものが選考の歩留まりにどう効くかは、候補者体験を良くすると、なぜ採用成功につながるのかでも整理しています。
整えるのは4か所だけ
文面全体を書き直す必要はありません。本文の情報部分(日程、場所、持ち物)はむしろ事務的で構いません。整えるべきは、次の4か所です。
1. 宛名 「応募者各位」「ご応募者様」は、一斉送信の印象を与えます。氏名がわかっているなら「田中 様」と書く。これだけで、文面は「自分宛て」になります。
2. 敬称と呼び方 「貴殿」「各位」といった硬い語は、ビジネス文書としては正しくても、採用の場面では距離を作ります。「〇〇様」で統一するのが無難です。
3. 書き出しの一文 用件からいきなり入らず、相手の状況に触れる一文を置きます。「お忙しいところ」ではなく、「先日はご応募いただきありがとうございました」「お電話が行き違いになってしまい失礼いたしました」など、直前のやり取りに紐づけると、機械的な印象が薄れます。
4. 締めの一文 「以上、よろしくお願いいたします」で終わると、会話が閉じます。ここに「ご不明な点があれば、この番号にそのままお電話ください」「当日は〇〇がお迎えします」と、次につながる一言を添えます。
この4か所は、どれも1〜2行です。テンプレートの骨格は変えずに差し替えられるため、現場の負担もほとんど増えません。
同じ内容で、書き換えてみる
先ほどの文面を、4か所だけ整えるとこうなります。
件名:面接日程のご相談(株式会社〇〇)
田中 様
先日はご応募いただき、ありがとうございました。採用担当の佐藤と申します。
面接の日程について、下記のいずれかでご都合はいかがでしょうか。ご在職中とのことでしたので、夜の時間帯もご相談いただけます。
・9月29日(月)10:00 / 14:00 ・9月30日(火)10:00
上記が難しければ、ご都合の良い日を2〜3つお知らせいただければ調整いたします。
ご不明な点は、このメールへの返信でも、下記の番号へお電話いただいても構いません。 〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇(佐藤)
伝えている情報はほぼ同じです。増えたのは、名前、名乗り、在職状況への一言、連絡先の案内だけ。それでも、受け取ったときの印象はかなり変わります。
特に効くのが名乗りです。「採用担当者」ではなく個人名が出ていると、候補者は「この人に返信すればいい」と認識できます。面接前後の連絡でも同じ名前が出てくれば、会う前から関係が始まっている状態を作れます。
なお、こうした文面の工夫は面接前日のリマインドでも同様に効きます。送る項目そのものについては面接前日のリマインドメール例文。送る5つの内容と気をつけたい一言を参考にしてください。
職種と年齢層で、どこまで調整するか
トーンに唯一の正解はなく、相手によって心地よい距離は変わります。一般的な感覚をもとに、目安を整理しました。あくまで仮の分類としてお読みください。
| 相手 | 硬さの目安 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 管理職・専門職の中途 | やや硬め | 敬語を崩さない。条件面は文章で正確に |
| 20〜30代の中途 | 標準 | 長文にしすぎない。要点を先に置く |
| パート・アルバイト | やわらかめ | 専門用語を避け、短文で。SMS併用が向く |
| シニア層 | 標準〜やや硬め | 文字を詰めすぎない。電話の案内を必ず添える |
| 学校経由の新卒 | 硬め | 学校の担当者にも読まれる前提で書く |
判断に迷ったら、硬めから入って、やり取りの中で少しずつ寄せるのが安全です。相手の返信が短文で絵文字混じりなら少しやわらげる、丁寧な長文が返ってくるならこちらも丁寧に返す。相手の文体に合わせるだけでも、距離感は自然に整っていきます。
ただし、やわらげてよいのは書き出しと締めだけです。給与、勤務時間、試用期間といった条件の記述は、どの相手でも正確さを優先してください。ここを曖昧にすると、後の段階で認識のずれとして跳ね返ります。
社内で文面をそろえる
トーンの問題が厄介なのは、担当者ごとにバラつくことです。社長からの連絡は温かいのに、事務担当からの連絡は事務的。同じ会社から届く連絡の温度が違うと、候補者は判断に迷います。
そろえるために必要なのは、立派なマニュアルではありません。次の3つを1枚にまとめるだけで足ります。
- 宛名と名乗りのルール(「〇〇様」、名乗りは個人名まで)
- 使わない語のリスト(各位、貴殿、〜されたし、過度な絵文字など)
- 場面別の書き出しと締めの定型(初回連絡、日程調整、面接後、不採用連絡の4場面)
本文の中身は場面ごとに変わりますが、この3点が共通していれば、誰が書いても会社としての声はそろいます。新しく採用に関わる人が増えたときも、この1枚を渡すだけで立ち上がりが早くなります。文面テンプレートを含めた最小限の手順書のつくり方は、応募対応マニュアルの作り方。1日で書ける最小構成で詳しく扱っています。
そのうえで、月に一度でよいので、実際に送った連絡文をいくつか読み返してみてください。自分が応募者だったらどう感じるか。その視点で読むだけで、直すべき箇所は見つかりやすいものです。
文面のトーンは、気をつけようと思っても日々の忙しさの中で後回しになります。応募が重なれば、まずは送ることが優先され、4か所を整える余裕はなくなっていきます。
社外採用部では、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォローまでを採用事務局として代行しています。文面のトーンや名乗り方も、御社の社風と募集職種に合わせて初回設計の段階ですり合わせます。料金は月額49,800円〜(初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積り)。責任者の佐々木が直接お話を伺います。
連絡文の温度まで手が回らないとお感じでしたら、こちらからお気軽にご相談ください。
無料相談