不採用の連絡文を前に、手が止まることがあります。定型文だけで送ると冷たく見える気がする。かといって理由を書けば、言い返されたり、どこかに書き込まれたりしないだろうか。結局「厳正なる選考の結果」の一文で送って、少し後味が悪い。そんな経験はないでしょうか。
この迷いは、丁寧さの問題ではなく、どこまで書いてよいかの線引きが決まっていないことから生まれます。線引きさえ先に決めておけば、不採用通知は毎回悩む仕事ではなくなります。ここでは、書いてよい理由と書かないほうがよい理由を仕分けし、そのまま使える文面の型まで整理します。
前提:理由を書かないことは、不誠実ではない
まず押さえておきたいのは、不採用の理由を候補者に説明しなければならないという決まりは、一般的には置かれていないという点です。多くの企業が定型文のみで通知しているのは、手抜きではなく、こうした背景があります。
一方で、候補者の側から見ると、理由のない通知は「何がいけなかったのか分からない」という形で残ります。特に面接まで進んだ方、何度か足を運んだ方ほど、その印象は強くなりやすいものです。
つまりこれは「書かなければならない」か「書いてはいけない」かの二択ではなく、どの段階の、どんな候補者に、どこまで添えるかという程度の問題です。書類選考で見送る方への通知と、最終面接まで来た方への通知を、同じ一文で済ませているとしたら、そこを分けるだけでも印象は変わります。不採用者への対応そのものが会社の評判にどう効くかは、不採用者への対応が、会社の評判をつくるでも整理しています。
なお、理由の書き方や表現が法的に問題にならないかという点で判断に迷う場合は、自己判断で押し切らず、顧問の社会保険労務士や弁護士など専門家に確認してください。この記事は実務上の整理であり、法的な助言ではありません。
書いてよい理由と、書くと角が立つ理由
理由を添えるかどうかで迷ったときは、その理由が「募集条件という客観的な事実」なのか、「人についての評価」なのかで分けると判断しやすくなります。
| 書いても角が立ちにくい | 書くと誤解やトラブルを招きやすい |
|---|---|
| 必須要件(資格・免許・経験年数)との不一致 | 「コミュニケーション能力が不足」などの人物評価 |
| 勤務可能な曜日・時間帯が募集枠と合わない | 「他の方のほうが優秀だった」という比較 |
| 勤務地・通勤範囲が条件と合わない | 「社風に合わない」という抽象的な印象 |
| 募集を予定人数で締め切った | 年齢・性別・家族構成などに触れる記述 |
| 今回の職種では経験分野が異なる | 面接中の受け答えの具体的な指摘 |
左側は、求人票に書いてある条件と照らせば誰が見ても同じ判断になる事柄です。候補者にとっても「なるほど、今回は条件が合わなかった」と受け止めやすく、反論の余地が少ない内容でもあります。
右側は、評価者の主観が入る領域です。本人に伝えても改善の手がかりになりにくいうえ、「どこを見てそう判断したのか」という問い合わせに発展しやすくなります。他の候補者との比較は、たとえ事実であっても書面に残すと角が立ちます。また、年齢・性別・出身地・家族構成などに触れる記述は、理由として書くべきではありません。そもそもそうした事柄を選考の判断材料にしないという前提に立ち、面接での質問内容からそろえておくことが大切です。
理由を書けるかどうかは、選考基準が言語化されているかどうかに直結します。 必須条件があいまいなまま運用していると、書こうにも客観的な理由が出てきません。この点は書類選考で落とす基準を決めておくと、対応が速くなるとあわせて考えると整理しやすくなります。
そのまま使える3つの型
実務では、次の3つを用意しておけばほとんどの場面に対応できます。文面は自社の言葉に置き換えてお使いください。
型1:理由を書かない(書類選考段階の標準)
○○様 このたびは弊社求人にご応募いただき、誠にありがとうございました。 ご提出いただいた書類をもとに慎重に検討いたしましたが、誠に残念ながら今回は採用を見送らせていただくこととなりました。 ご応募いただきましたこと、改めて御礼申し上げます。○○様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。
書類段階では、これで十分なことが多いです。短くても、応募への感謝と結論が明確であれば失礼にはあたりません。
型2:必須要件との不一致を一言添える
慎重に検討いたしましたが、今回の募集では○○(資格名・経験年数など)を必須条件としており、誠に残念ながら採用を見送らせていただくこととなりました。
求人票に書いてある条件をそのまま引くだけなので、新たな評価を加えていません。候補者も次の応募先を探す際の判断材料にできます。
型3:面接まで進んだ方へ、時間への謝意を加える
先日はご多用のなか、面接のお時間をいただきありがとうございました。 社内で慎重に検討を重ねましたが、今回の募集職種では○○の経験を重視しており、誠に残念ながら採用を見送らせていただくこととなりました。 当日お話しいただいた内容については、ありがたく拝聴いたしました。○○様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。
面接に来ていただいた方には、移動と時間をかけてもらった事実があります。その一言があるかないかで、受け取る印象は変わりやすいものです。伝える手段そのものを迷う場合は、不採用を電話で伝えるか、メールで伝えるかも参考になります。
「理由を教えてください」と聞かれたときの答え方
通知を送ったあと、候補者から理由を尋ねられることがあります。ここで慌てないために、答え方を先に決めておきます。
原則としては、書面に書いた範囲を超えて追加の理由を説明しないという線で統一しておくのが無難です。「選考に関する詳細は回答を控えさせていただいております。何卒ご了承ください」と、丁寧に、しかし一律に返す形です。人によって答える・答えないが分かれると、かえって不公平感が生まれます。
ただし、必須要件との不一致が理由であれば、それは求人票に公開している情報ですから、改めて伝えても問題は生じにくいでしょう。「今回は○○の資格を必須としておりましたため」と事実のみを繰り返します。
答える担当者を一人に固定し、どう返すかを短いメモにして共有しておくと、電話を受けた社員が困りません。やり取りが発生した場合は、日時と内容を応募者の記録に残しておきます。再応募があったときにも役立ちます。
迷わないために、先に決めておく3つのこと
最後に、不採用通知を毎回悩まずに出すために、社内で決めておきたいことを挙げます。
- 段階ごとの標準文面を決める。書類選考は型1、面接後は型3、というように対応づけておきます。
- 理由を添える条件を決める。「必須要件との不一致のときのみ添える」と一行で決めておけば、判断に迷いません。
- 送るタイミングと担当を決める。判断が出てから何日以内に、誰の名前で送るか。ここが決まっていないと、通知そのものが遅れたり、送られないまま終わったりします。
不採用の連絡は、採用の工程のなかで最も後回しにされやすい作業です。そして、後回しにしても今月の採用数には影響しないように見えます。それでも、見送った方に届く通知の一通が、その方が周囲に話す会社の評判をつくっていきます。
社外採用部では、応募の受付から初回連絡、面接の日程調整、面接前後のフォロー、そして不採用連絡のような後回しになりがちな工程までを、御社の採用事務局として引き受けています。面接そのものと採否の判断は御社にお任せいただき、その前後の連絡を途切れさせない形です。文面の型づくりや、段階ごとの運用ルールの整理からご一緒することもできます。
「対応が遅れて候補者を逃している気がする」とお感じでしたら、お問い合わせからお気軽にご相談ください。現在の進め方をうかがったうえで、どこから手を入れるのが早いかをご提案します。
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