不採用の連絡は、採用活動のなかで最も気が重い工程のひとつです。多くの会社では、媒体やメールソフトに保存した定型文を使い、「慎重に選考いたしましたが、今回はご期待に沿えない結果となりました。またの機会がございましたら、ぜひご応募ください」といった形で送られています。手早く、角も立たない。実務としては妥当な判断です。
ただ、この「またの機会に」が実際に次の応募につながった経験は、どれくらいあるでしょうか。ほとんどの場合、候補者はこの一文を社交辞令として読み流しています。そして問題なのは、本当にもう一度応募してほしかった相手にまで、同じ社交辞令を送ってしまっていることです。この記事では、定型句をそのまま使ってよい場面と、一言を足すべき場面の線引きを整理します。
なぜ「またの機会に」は社交辞令として読まれるのか
候補者の側に立つと、この一文が機能しない理由ははっきりしています。
ひとつは、誰にでも送られている文だと分かることです。応募者は複数社に応募していることが多く、似た文面を何通も受け取ります。会社名を入れ替えても成立する文は、自分に向けられたものとして読まれません。
もうひとつは、「またの機会」がいつ来るのか分からないことです。次の募集が3ヶ月後なのか2年後なのか、そもそも同じ職種で募集があるのか。何も書かれていなければ、候補者が自発的に御社の求人を見張り続ける理由はありません。
そして最後に、仮に再応募しても結果が変わるのか分からないことです。今回落ちた理由が分からないまま同じ求人に出し直すのは、候補者にとって気の重い行為です。何がどう変われば検討の余地があるのかが示されていなければ、動きようがありません。
不採用連絡そのものの出し方や、会社の評判への影響については不採用者への対応が、会社の評判をつくるでも触れていますが、ここで扱いたいのはその先、「次につなぐ意思がある場合に何を書くか」です。
本当に再応募を歓迎する相手に添える3つの要素
すべての不採用者に手を入れる必要はありません。むしろ、全員に同じだけ丁寧な文を書こうとすると続かなくなります。「この人にはもう一度来てほしい」と感じた相手にだけ、次の3つのうち書けるものを添えます。
1. どの点を評価したか
「今回は見送りとなりましたが、◯◯のご経験については前向きに拝見しました」のように、具体的な一点に触れます。抽象的な「人柄が良かった」ではなく、職務経歴や面接で実際に出てきた内容を指すことが大切です。固有の話が入った瞬間に、定型文ではなくなります。
2. 今回見送った理由の輪郭
詳細な評価を伝える必要はありませんし、トラブルを招くこともあります。伝えるとすれば「今回は即戦力として◯◯の実務経験がある方を優先しました」程度の、採用側の事情として説明できる範囲にとどめます。候補者側の欠点ではなく、今回の募集要件との兼ね合いとして書くのが基本です。
3. 次にどんな求人が出たら連絡するか
ここが最も抜けやすい部分です。「今後、別職種や別の条件で募集を行う際にご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか」と、連絡の可否を相手に尋ねる形にします。同意を得ておけば、半年後に連絡しても唐突になりません。応募者情報の保管期間や取り扱いについては、募集時の案内と整合するように社内で確認してください。
文例としては、次のような形です。
このたびはご応募いただき、ありがとうございました。慎重に検討いたしましたが、今回は募集職種の経験年数を優先する判断となり、採用を見送らせていただくこととなりました。 面接でお話しいただいた◯◯の進め方については、当社としても参考になる内容でした。今後、別の職種や条件での募集を行う際に、改めてご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか。ご希望でなければ、その旨をお知らせいただければ以後のご連絡は控えます。
「ぜひご応募ください」と相手に行動を求めるのではなく、「こちらから連絡してよいか」と聞く。この向きの違いが、社交辞令と実意の分かれ目になります。
社交辞令で済ませたほうがよい場面
一方で、定型文のままで構わない、あるいは定型文のほうが適切な場面もあります。実意のない「またの機会に」より困るのは、歓迎するつもりがないのに歓迎と読める文を送ってしまい、再応募を受けて断りにくくなることです。
| 場面 | 連絡の仕方の目安 |
|---|---|
| 必須要件(資格・免許など)を満たしていない | 定型文。要件を満たした場合は歓迎する旨だけ添えるのは可 |
| 書類段階で見送り、接点が応募受付のみ | 定型文で十分。無理に個別の一言を足さない |
| 条件(勤務地・時間・給与)が根本的に合わない | 定型文。条件面が理由であることは簡潔に触れてよい |
| 面接での態度や受け答えに懸念が残った | 定型文。評価に触れず、再応募を促す表現は入れない |
| 要件は満たすが他候補との比較で見送り | 一言を添える。連絡の可否を聞いておく |
| 経験は十分だが募集枠・タイミングが合わなかった | 一言を添える。次の募集時期の見込みがあれば伝える |
線引きの基準はシンプルです。「次に募集が出たとき、この人から応募があったら面接に呼ぶか」。呼ぶと即答できる相手にだけ、一言を添えます。迷う相手は定型文で構いません。中途半端に期待を持たせるより、そのほうが双方にとって誠実です。
「歓迎」と書いたら、連絡する運用までをひと続きにする
ここが実務の肝です。再応募を歓迎する文を送ったのに、半年後に募集を出すとき誰もそのことを覚えていない。これでは定型文を送ったのと変わりません。むしろ、連絡を待っていた候補者には悪い印象が残ります。
必要なのは大がかりな仕組みではなく、記録の一行です。応募者の管理表に次の項目を足しておきます。
- 連絡可の同意を得たか(はい/いいえ)
- 次に検討できる職種・条件
- 見送り理由の要約(ひと言)
- 連絡してよい時期の目安
記録の項目全体をどう設計するかは応募者の記録は何を残せばいいのか。最低限の6項目が参考になります。そして求人を出すと決めたとき、媒体に申し込む前にこのリストを開く。これを習慣にするだけで、「またの機会に」は運用になります。実際に連絡する際の文面や、追いかけないラインの決め方は過去に応募してきた人に、もう一度連絡していいのかで整理しています。
また、再応募が実際に来たときに前回の記録が引き出せないと、同じ質問を繰り返して候補者をがっかりさせます。受け入れ側の実務は過去に不採用にした人が再応募してきたときの扱いもあわせてご覧ください。
書くのは一言、支えるのは仕組み
ここまでの内容は、どれも難しい話ではありません。ただ、応募受付から日程調整、面接前後のフォローまでを兼務で回している会社では、不採用連絡は最後に回され、定型文を送るだけで精一杯になりがちです。一言を足す余裕も、記録を残す余裕も、その日のうちには残りません。
仮の数字で考えてみます。月に応募が10件あり、そのうち面接に進むのが4件、採用は1件。残る9名への連絡のうち、一言を添えるべき相手は1〜2名でしょう。1件あたり5分としても10分程度です。問題は時間の総量ではなく、その10分が確保される場所が決まっていないことのほうにあります。
社外採用部は、中小企業の採用事務局として、母集団形成から応募の受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー・内定や入社後のフォローまでを社外から担います。面接そのものと採否の判断は御社が行い、その判断を候補者にどう届けるか、そして一度ご縁がなかった方の記録をどう残して次につなげるかを、こちらで引き受けます。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円。支援内容に応じて個別にお見積りします。
「またの機会に」を本当の機会に変えられるかどうかは、文面の巧拙よりも、その後の一行の記録と、半年後にそれを開く習慣にかかっています。自社の不採用連絡を見直してみたいという方は、こちらからご相談ください。現在の連絡文と運用を伺ったうえで、どこから手を入れられそうかをお伝えします。
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