「人に関することは、顧問の社労士さんに聞けばいい」。中小企業では、ごく自然な発想です。実際、給与計算も社会保険も就業規則も社労士に任せている会社であれば、採用の相談先として真っ先に思い浮かぶのは当然でしょう。
ところが「応募は来ているのに面接まで進まない」「返事が遅れて辞退された」と相談してみると、話がかみ合わないことがあります。社労士の側も親身に聞いてくれるものの、具体的な打ち手が出てこない。これは相手の力量の問題ではなく、そもそも守備範囲が違うことが多いためです。この記事では、どこまでが社労士に相談すべきことで、どこからが別の担い手の仕事なのか、工程で線を引いて整理します。
社労士の主戦場は「雇ってから」と「制度のまわり」
社会保険労務士は、労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成・提出代行や、帳簿書類の作成、労務管理に関する相談指導を業務とする国家資格です。雇用保険や社会保険の資格取得手続き、就業規則の作成・変更、労働条件通知書の整備、助成金の申請支援。このあたりが日常的に相談される領域です。
共通しているのは、**「雇う人が決まったあと」または「雇う前提となる制度」**を扱っているという点です。誰を採るかが決まっていれば手続きは進みますし、就業規則や賃金テーブルは応募が1件でも100件でも同じように整えられます。
一方で、「応募があったその日にどう連絡するか」「電話に出ない候補者に次は何を送るか」「面接前日にどんな一言を添えるか」といった話は、制度の外側にあります。法令に照らして正解が決まる問題ではなく、候補者一人ひとりへの対応の積み重ねです。ここは社労士の業務範囲として想定されている領域ではないため、相談しても一般論にとどまりやすいのです。
工程で並べると、線引きが見えてくる
応募から入社までを工程に分けて、どちらが担いやすいかを並べてみます。
| 工程 | 主な担い手 | 内容の性質 |
|---|---|---|
| 求人票の労働条件表記の確認 | 社労士 | 法令適合・記載の正確さ |
| 応募の受付・初回連絡 | 採用事務局など | スピードと対応品質 |
| 日程調整・面接前フォロー | 採用事務局など | 候補者との個別のやりとり |
| 面接・採否判断 | 自社 | 経営判断そのもの |
| 不採用連絡・選考中フォロー | 採用事務局など | 文面と伝え方 |
| 内定通知書・労働条件通知書の作成 | 社労士 | 記載事項の法的整備 |
| 内定後〜入社日までのフォロー連絡 | 採用事務局など | 辞退防止の関係づくり |
| 入社時の社会保険・雇用保険手続き | 社労士 | 申請書類の作成・提出 |
| 助成金の申請 | 社労士 | 制度要件の確認と申請 |
こうして並べると、社労士と応募後対応は取り合いの関係ではなく、交互に出番が来る関係だとわかります。求人票を出す前と、採用が決まったあとに社労士の出番があり、その間の「候補者とやりとりしている期間」に別の担い手が必要になる、という構造です。
自社の工程をこの粒度まで書き出すこと自体が、相談先を決める作業になります。やり方は採用担当の業務を全部書き出してみる。内製と外注の分け方にまとめています。
「相談できる」と「実務を回せる」は別の話
もうひとつ混同されやすいのが、助言と実務代行の違いです。
顧問契約の多くは、月次の手続きと相談対応が中心です。採用について聞けば、法令上の留意点や労働条件の書き方についてはしっかり答えが返ってきます。しかし、「応募が来たら1時間以内に電話をかけ、出なければSMSを送り、翌日また追う」という日々の動きは、顧問契約の中に入っていないことがほとんどです。
つまり、相談先としては適切でも、詰まっている場所が実務であれば、相談しても状況は変わりません。応募後1時間以内の初回連絡が、採用の歩留まりを変える理由で触れているとおり、応募後の勝負どころは分単位・時間単位で動きます。この速度は、月1回の訪問や随時の相談という形式では支えにくいものです。
判断の目安として、次のどちらに当てはまるかを考えてみてください。
- 書類・制度・法令の不安が中心 → 社労士に相談する場面
- 連絡や日程調整が回らず、候補者が離れていく → 実務を担う手が足りていない場面
前者なら顧問社労士に聞くのが早道です。後者は、聞く相手を変えても解決しません。手を増やすか、外に出すかという別の判断になります。
境目にある「入社手続き」をどう渡すか
実務上いちばん混乱しやすいのが、内定から入社日までの区間です。ここには、社労士が担う書類と、候補者への連絡が同時に発生します。
たとえば労働条件通知書。作成そのものは社労士の領域ですが、それを「いつ、どういう言葉を添えて候補者に渡すか」は採用側の仕事です。内定者から「入社日はずらせますか」「社会保険はいつから入れますか」といった質問が来たとき、答えを社労士に確認したうえで、候補者には当日中に返す。この橋渡しが抜けると、書類は正しく揃っているのに返事が遅れ、候補者の不安だけが残ります。
一般に、内定から入社までのこの区間で連絡が止まると、辞退につながりやすいと言われます。準備物の全体像は入社初日までにやること。受け入れ準備のチェックリストに整理していますが、ポイントは「書類を作る人」と「候補者に伝える人」を分けたうえで、両者の情報が行き来する形にしておくことです。
どちらが上という話ではなく、順番の問題
ここまで整理すると、顧問社労士に採用を相談すること自体は間違いではありません。労働条件の設計や手続きは採用の土台であり、ここが曖昧なままでは、どれだけ丁寧に候補者対応をしても後で食い違いが出ます。
ただし、いま自社が困っているのが「応募が来たあとに手が回らない」ことであれば、相談先はもう一枚必要です。社労士に制度と手続きを、別の担い手に候補者とのやりとりを。役割を重ねず、分けて持つという考え方です。
社外採用部は、この後者を担う採用事務局サービスです。応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定から入社までのフォローまでを、御社の窓口として代行します。求人・媒体・スカウトなど母集団形成の運用も含め、面接以外の採用実務をお引き受けします。面接そのものと採否の判断は御社が行い、労務手続きや就業規則は顧問社労士の領域として尊重します。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。サービス責任者の佐々木代表を含め、既存の顧問先との役割整理を前提にご相談をお受けしています。
「社労士さんに聞いたけれど、この部分は違うようだ」と感じている工程があれば、その1工程だけでも切り出してみてください。自社の状況をお聞かせいただければ、どこからが当方の範囲かを一緒に線引きします。こちらからお問い合わせください。
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