面接では手応えがあり、条件も納得してもらえた。内定通知を出し、承諾書を郵送した。ところが、それから一週間が経っても封筒が戻ってこない。連絡もない。催促すると気を悪くされそうで、かといって待っていても状況は動かない――こうした宙ぶらりんの状態は、中小企業の採用で驚くほど頻繁に起きます。

このとき厄介なのは、「返ってこない」という一つの事実の裏に、まったく性質の違う理由が混ざっていることです。理由が違えば打つ手も変わります。この記事では、返送が止まる背景を3つに分けて読み解き、何日待って、どんな文面で、誰の名前で連絡するか。そして期限を切ったあとに返事がない場合、どこで「保留」と判断して求人を再開するかまでを整理します。

承諾書が返ってこない3つの理由

返送が止まる背景はおおむね次の3つに分かれます。

1. 迷っている 他社の選考が残っている、家族と話がついていない、現職の退職交渉が進んでいない。決めきれないので、書類に手をつけられない状態です。この場合、催促の文面を丁寧にしても前に進みません。迷いの中身を聞くことが先になります。

2. 手続きが面倒で後回しになっている 書いて、押印して、封をして、切手を貼って、ポストに出す。この工程は、働きながら転職活動をしている方にとって想像以上に重い作業です。悪気はなく、単に週末まで持ち越されているだけ、ということも珍しくありません。

3. 書類が届いていない、または紛失している 郵送物が家族の郵便物に紛れた、メールが迷惑メールに振り分けられた、添付ファイルを開けなかった。連絡がないのは「送ったつもり」と「受け取ったつもり」がずれているせいだった、というケースもあります。

この3つは、催促の一報でどれなのかが判別できます。逆に言えば、最初の連絡は「催促」ではなく「切り分け」のために送るものだと考えると、文面がつくりやすくなります。

何日待って、どのタイミングで連絡するか

待つ期間を感覚で決めていると、遅れるか、急かしすぎるかのどちらかに振れます。あらかじめ時計を決めておくほうが安定します。以下は、仮に「金曜に内定通知を出し、承諾書を郵送した」ケースの目安です。

タイミングやること連絡手段
発送の翌営業日「送りました」の一報。到着予定日を伝えるメール/SMS
発送から3営業日後到着確認。届いていない場合は再送メール
期限の3日前返送期限のリマインドと、不明点の受付メール+必要なら電話
期限当日〜翌営業日状況確認の電話。迷いの有無を聞く電話
期限から3営業日超保留として扱う判断/募集再開の検討電話+メール

ポイントは、発送直後に「送りました」の一報を入れておくことです。これがあるだけで、3つ目の理由(届いていない・紛失)をかなり潰せます。そのうえで、到着確認と期限前リマインドを挟めば、催促らしい催促をせずに済むことが多いものです。

なお、この時計は内定通知の出し方とセットで初めて機能します。条件だけを紙で伝えて終わっていると、承諾書は「事務書類」になってしまいます。内定通知の出し方で承諾率は変わる。伝え方とスピードもあわせてご確認ください。

文面は「催促」ではなく「確認と補助」で書く

催促のメールが書きづらいのは、督促の色が出てしまうからです。目的を「返送を急がせる」から「詰まっているところを確認して手伝う」に置き換えると、言葉が出てきます。

到着確認の文例です。

先日お送りした内定に関する書類は、お手元に届いておりますでしょうか。行き違いがあるかもしれませんので、念のためご確認をお願いできますと幸いです。もし届いていない場合や、記入方法でご不明な点がありましたら、いつでもご連絡ください。データでのご提出でも差し支えありません。

期限前のリマインドでは、そこに一つ問いを足します。

ご返送の期限を◯月◯日とお伝えしておりました。ご準備の状況はいかがでしょうか。ご判断に迷っている点や、確認したいことが残っている場合は、書類より先にそちらをお聞かせいただければと思います。入社日の調整も含めて、あらためてご相談させてください。

「迷っているなら書類より先に相談してほしい」と明示しておくと、迷いを抱えた候補者が沈黙以外の選択肢を持てます。返送だけを求める文面は、迷っている人に対しては黙る理由を増やしてしまいます。

差出人は、事務連絡なら採用担当や事務局の名前で構いません。ただし、期限当日以降の電話は、面接で実際に話した人――多くの中小企業では社長や部門責任者――が直接かけるほうが、話が動きやすい印象があります。関係のできている相手からの一本は、催促ではなく「気にかけている」というメッセージとして受け取られやすいためです。

電話で迷いが出てきた場合、その多くは他社比較か退職交渉です。前者は比較の軸を一緒に整理する対話に、後者は退職の申し出時期と引き継ぎの見通しを聞く実務に切り替わります。後者については内定者が現職に引き止められている。退職交渉を支えるフォローで詳しく扱っています。

期限の切り方と、切ったあとの扱い

期限は、内定通知と同時に伝えておくのが基本です。あとから追加すると、それ自体が圧力になります。

伝え方は、理由をつけると受け取りやすくなります。「入社日の準備と社会保険の手続きがあるため、◯月◯日までにご返送をお願いしています」といった形です。期間としては、発送から1週間から10日程度が現実的な線でしょう。在職中の方や家族と相談が必要な方には、最初から少し長めに設定しておくほうが、あとで延ばすより印象が良いことが多いです。

そして、延長を申し出られたときは、原則として受けたうえで新しい期日を一緒に決めます。「いつまでにご返事いただけそうですか」と本人に言ってもらう形にすると、次の連絡が催促ではなく約束の確認になります。

問題は、期限を過ぎても返事も連絡もないときです。ここで会社が取れる姿勢は3つあります。

実務では、追ったうえで保留に置くのが現実的です。そして保留に移した時点で、求人の再開を検討します。目安としては、期限から3営業日を超えて一切の連絡がつかない状態が続くとき。連絡はあるが返送だけが遅れている場合は、まだ追う段階です。

求人再開は「見捨てる」ことではありません。承諾書が返ってきた時点で掲載を止めればよいだけです。逆に、承諾を待って掲載を止め、そのあと辞退されると空白期間がまるごと損失になります。この判断の詳細は募集を止めるタイミング。選考中の候補者がいるときの掲載判断にまとめました。

仮の数字で考えると、月に採用が1名必要な会社で欠員が1ヶ月延びれば、それだけで求人費を上回る機会損失になることもあります。保留の判断を早めに置いておくことは、候補者への不信ではなく、会社側の備えです。

返送を待つ時間を、放置の時間にしない

承諾書が返ってこない一週間は、会社にとっては「待ち時間」ですが、候補者にとっては迷いや不安が育つ時間です。その間に連絡が一本もなければ、迷いは静かに他社へ傾いていきます。到着確認、期限前リマインド、期限当日の電話。この3回の接触を型にしておくだけで、宙ぶらりんの期間はかなり短くなります。

とはいえ、これを社長や総務の方が他の業務と並行して回すのは負担が大きい部分です。承諾書の到着確認や期限前のリマインドは、決まったタイミングで決まった文面を送る仕事なので、社外に預けやすい領域でもあります。社外採用部では、応募の受付から日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを採用事務局として代行しています。料金は月額49,800円〜(初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積り)で、まずは自社の内定後の連絡がどこで止まっているかを一緒に整理するところから始められます。

内定を出したあとの数日をどう埋めるか迷っている段階でも構いません。ご相談はこちらからお気軽にお寄せください。