採用にかけられるお金が月5万円。決して珍しい金額ではありません。むしろ、従業員数十名規模の会社で「毎月継続的に出せる採用予算」を正直に書き出すと、この水準に落ち着くことは多いものです。そして多くの場合、その5万円はほぼ全額が求人広告の掲載費に消えていきます。

問題は、その配分が意図して決められたものかどうかです。「採用予算=広告費」という前提を一度も疑わないまま毎月の掲載を続け、応募が来ても面接まで進まない状態が続いているとしたら、5万円の置き場所を考え直す余地があります。この記事では、限られた予算をどこに振り分けるかを、判断の順番として整理します。

月5万円は「広告費」ではなく「採用予算」として考える

採用に必要な工程は、大きく2つに分かれます。応募を集める工程(求人票の作成、媒体への掲載、母集団形成)と、来た応募を入社までつなぐ工程(受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォロー)です。

広告費はこのうち前半にしか効きません。後半は、社長や総務担当の時間という「見えない予算」で賄われているのが実情です。つまり多くの中小企業は、現金5万円を前半に全額投じ、後半は社内の人件費で無償労働のように処理している状態です。

ここで一度、月5万円という金額を「広告に使えるお金」ではなく「採用のどこかに使えるお金」として捉え直してみてください。前半に5万円、後半に0円という配分は、決まった正解ではなく、たまたま続いてきた慣習であることが少なくありません。社内で使っている時間の金額感を掴みたい場合は、社長と総務が採用に使っている時間は、いくらのコストかの計算手順が参考になります。

応募が少ない会社ほど、1件の取りこぼしが重い

予算が限られている会社は、応募数も限られます。ここが、大手企業と決定的に違う点です。

仮の数字で考えてみます。ある会社が月5万円で求人を掲載し、月に5件の応募が来たとします。1件あたりの応募単価は1万円です。このうち面接に進んだのが2件、面接に来たのが1件、採用に至らず翌月も掲載を続ける──よくある流れです。

このとき、連絡が翌日以降にずれ込んで音信不通になった1件の損失はいくらでしょうか。単純に広告費を按分すれば1万円ですが、それだけではありません。5件しかない応募のうち1件は全体の20%です。母集団が100件あるうちの1件の取りこぼしと、5件のうちの1件の取りこぼしでは、採用成否に与える影響がまったく違います。

応募が多い会社は、取りこぼしを「歩留まりの数%」として吸収できます。応募が少ない会社は吸収できません。1件の離脱が、そのまま「その月は採用できなかった」という結果に直結します。つまり予算が小さいほど、1件あたりの対応品質に依存する構造になっているということです。この考え方は内定辞退1件で、いくら失っているのかでも、辞退という別の場面で扱っています。

配分を決める前に、面接設定率を1回だけ測る

では、5万円を前半と後半のどちらに寄せるべきか。これを感覚で決めないための材料が、応募のうち何件が面接まで進んだかという数字です。

過去3ヶ月分の応募を紙に書き出し、次の3つだけ集計してください。

  1. 応募件数
  2. 初回連絡までに実際かかった時間(件別)
  3. 面接を設定できた件数

集計は電卓と紙で足ります。ツールも要りません。ここで出てくる「面接を設定できた件数 ÷ 応募件数」が面接設定率です。計算と記録の詳しい手順は面接設定率という指標。応募からの歩留まりを測る第一歩にまとめてあります。

この数字を見ると、自社の詰まりが応募の前にあるのか後にあるのかが、かなりはっきりします。応募が月に1〜2件しか来ておらず、そのほとんどが面接まで進んでいるなら、詰まりは応募前です。逆に応募は来ているのに半分以上が面接に至っていないなら、詰まりは応募後です。

ボトルネックが応募の前か後かで振り分ける

測った数字をもとに、5万円の置き場所を決めます。判断の目安を仮の水準で並べると、次のようになります。

状況詰まっている場所予算の寄せ方
応募がほぼ0件。求人が見られていない応募前まず掲載・求人票に配分する
応募はある。面接設定率が高く、面接から先で落ちる応募後(面接以降)面接前後のフォローに手をかける
応募はある。面接設定率が低い、初回連絡が翌日以降応募後(初動)対応の速さを担保する仕組みに配分する
応募も面接もあるが、内定後に辞退が続く応募後(内定以降)内定〜入社のフォローに配分する

※水準はあくまで目安で、業種や職種によって変わります。

大事なのは、詰まっていない場所に予算を足しても結果は動きにくいという点です。応募後で落ちている会社が広告費を倍にすると、取りこぼす件数も増えます。単価は下がらず、社内の対応工数だけが重くなります。この順番の話は応募が少ない会社が、応募を増やす前にやるべきことでも扱っています。

一方で、求人が誰にも見られていない状態でフォローの型を整えても、対象がいません。「応募後が大事」という主張はよく見かけますが、それは応募がある会社に限った話です。自社がどちらなのかを数字で決めてから配分してください。

5万円の配分は、3ヶ月ごとに見直す

予算配分は一度決めたら固定するものではありません。応募前に寄せて応募が増えれば、次に詰まるのは応募後です。応募後を整えれば、また母集団の量が課題になります。ボトルネックは移動します。

そこで、3ヶ月を1区切りにして、同じ3つの数字(応募件数・初回連絡までの時間・面接設定率)を測り直すことをおすすめします。前回と比べて動いた数字と動かなかった数字を見れば、次の3ヶ月の配分は自然に決まります。

なお、応募後の対応を社外に出す選択もあります。弊社の社外採用部は月額49,800円〜(初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積り)で、求人・媒体・スカウトなど母集団形成の運用から、応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまで、面接以外の採用実務を採用事務局として担う形です。面接そのものと採否の判断は御社が行います。詰まりが応募前にある会社も、応募は来ているのに面接まで繋がらない、対応が遅れて辞退される、という会社も、どちらも相談の対象になります。

いずれにしても、まずは自社の3つの数字を出すところからです。数字を見てみたものの、詰まりが応募前なのか後なのか判断がつかないという場合は、お問い合わせから現状をお聞かせください。サービス責任者の佐々木がお話を伺い、予算の置き場所についての見立てをお伝えします。