来期の予算編成の時期になると、採用費の欄だけ手が止まる。そんな経営者の方は少なくありません。広告宣伝費や設備投資には根拠があるのに、採用費だけは「去年が年間◯◯万円だったから、今年も同じくらいで」と決まってしまう。そして期の途中で「もう予算がない」となり、急な欠員が出たときに掲載を出せなくなる。
採用予算は、本来は積み上げで作れるものです。来期に何人採りたいかが決まっていれば、そこから逆算して「応募が何件必要か」「その応募を捌くのに社内で何時間かかるか」までたどることができます。この記事では、その逆算の手順と、広告費だけで終わらせない予算フォーマット、そして期中で足りなくなったときの削る順番までをまとめます。
「去年と同じ額」では、増やすときも減らすときも説明できない
前年踏襲の予算がやっかいなのは、金額そのものよりも「根拠がないこと」です。根拠がないと、二つの場面で困ります。
ひとつは、増額を判断するとき。現場から「もっと広告を出したい」と言われても、いくら増やせばいくら返ってくるのかが分からないため、社長の勘で決めるしかなくなります。もうひとつは、減額を迫られるとき。業績が厳しくなって経費を絞る局面で、採用費は「今すぐ止めても明日困らない」費目に見えるため、真っ先に削られます。削った結果、半年後に人が足りなくなる。
逆算で組んだ予算は、この二つの場面で「この金額は、来期◯名を採るために必要な額です」と言い切れる状態をつくります。金額が正確である必要はありません。根拠の筋道が通っていることのほうが、予算としては大事です。
採る人数から、3つの数字をたどって逆算する
逆算はシンプルです。ゴールから順に、3つの数字をさかのぼります。
1. 来期に採りたい人数を、職種別・時期別に書く
「来期5名」ではなく、「配送ドライバー3名(4月・7月・10月)、事務1名(5月)、現場作業1名(時期未定)」まで分解します。時期が分かると、広告掲載を出す月が決まり、予算の使い方が月次でならせます。
2. 内定承諾率と面接からの内定率をかけ戻す
たとえば仮の数字で、面接した方の3割に内定を出し、そのうち7割が承諾するとします。1名採用するには、面接がおよそ5件必要という計算になります。ここは自社の過去1年の実績から拾ってください。記録がなければ、今期から残し始めるだけでも来々期の予算精度は変わります。
3. 面接設定率から、必要な応募数を出す
応募のうち何割が面接まで進んだか。仮に面接設定率が4割なら、面接5件には応募が約13件必要です。この面接設定率は、予算全体を左右する数字です。詳しくは面接設定率という指標。応募からの歩留まりを測る第一歩で計算方法を整理しています。
ここまでたどれば、「ドライバー3名を採るには年間で応募が約40件必要」といった水準が見えます。あとは1件あたりの応募単価をかければ、広告費の目安が出ます。
逆算していて気づくのは、面接設定率が10ポイント動くだけで必要な応募数が大きく変わることです。予算を作る作業は、同時に「対応を改善したほうが安いのはどこか」を考える作業でもあります。
予算表には、広告費以外の2列を必ず並べる
採用予算というと求人広告費や紹介手数料しか書かれていないことが多いのですが、実際にお金と時間が出ていくのはそこだけではありません。予算表には、次の3つの費目を横に並べてください。
| 費目 | 中身 | 見積もりの出し方 |
|---|---|---|
| ① 母集団形成費 | 求人広告、紹介手数料、ハローワーク以外の掲載、採用ページ改修 | 必要応募数 × 応募単価 |
| ② 応募後対応の社内工数 | 初回連絡、日程調整、リマインド、面接同席、不採用連絡、内定後フォロー | 月あたり対応時間 × 担当者の時間単価 × 12ヶ月 |
| ③ 入社手続き・受け入れ費 | 労務手続き、備品・作業着・健康診断、初期研修中の指導者工数 | 1名あたり概算 × 採用予定人数 |
②を金額として並べることに、抵抗を感じる方もいるかもしれません。社内の人件費はすでに固定費として払っているからです。それでも並べる理由は、外注を検討するときの比較対象がここにしかないからです。時間単価への置き換え方は社長と総務が採用に使っている時間は、いくらのコストかに手順をまとめています。
③を忘れると、採用したあとに想定外の出費として現れます。作業着や健康診断、初日の指導につく先輩社員の時間。1名あたりの概算を一度出しておくと、次からは人数をかけるだけで済みます。
期中で足りなくなったとき、どこから削るか
予算は、たいてい期中で足りなくなります。想定外の退職が出た、掲載しても応募が集まらなかった、といった理由です。そのときに削る順番をあらかじめ決めておくと、判断が速くなります。
先に削ってよいもの
- 応募数を増やすための追加掲載(面接設定率が低いまま応募だけ増やしても、取りこぼしが増えやすい)
- 採用ページの改修やパンフレットなど、効果が出るまで時間のかかる投資
- 選考回数を増やすための面接(一次・二次に分ける必要が本当にあるかを見直す)
削らないほうがよいもの
- 応募が来たあとの初回連絡と日程調整にかける手当て
- 面接前日のリマインドと、面接後のフォロー連絡
- 内定から入社日までの連絡
後者を削ると、すでに投じた広告費がそのまま無駄になります。応募を集める段階のお金は「まだ何も起きていない支出」ですが、応募後の対応にかかる費用は「すでに投じた支出を回収するための費用」です。順番としては、回収側を守って、入口側を絞る。
もっとも、応募後の対応は人手そのものなので「削る」ではなく「誰がやるか」の問題になりがちです。社内で抱えきれないと判断した場合は、外部に一部を預けるほうが総額は抑えられることもあります。判断材料は応募対応を外注して、元が取れたかをどう判断するかで整理しています。
予算は年に一度ではなく、四半期で見直す
逆算で組んだ予算の良いところは、期中に修正できることです。前提に置いた面接設定率や内定承諾率は、実績が出れば書き換えられます。3ヶ月ごとに実績の歩留まりを入れ直し、残りの期間に必要な応募数と広告費を計算し直す。この作業自体は30分もあれば終わります。
このとき、金額だけでなく歩留まりの数字も一緒に見てください。応募が足りないのか、応募はあるのに面接まで進んでいないのかで、追加すべき予算の行き先が変わります。前者なら①の母集団形成費、後者なら②の応募後対応です。
来期の採用予算は、金額を決める作業であると同時に、自社の採用のどこが詰まっているかを確認する作業でもあります。数字が埋まらない欄があれば、そこが記録の取れていない工程です。
株式会社Talencoの「社外採用部」は、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまでを社外の採用事務局として担うサービスです。月額49,800円〜、初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りする料金体系のため、来期予算の②の欄に置き換える金額は、お見積りをもとに試算していただけます。予算を組む前の現状整理からご相談いただけますので、お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。サービス責任者の佐々木純平が直接お話を伺います。
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