ハローワークの窓口や顧問社労士から「この方ならトライアル雇用の対象になるかもしれません」と言われて、はじめて採用関連の助成金を意識した、という経営者の方は少なくありません。使えるなら使いたい。でも書類が多そうだし、いくら入るのか、いつ入るのかがよく分からない。結局、忙しさに押し流されて申請しないまま終わる——よくある流れです。

この記事では、個別の制度を細かく解説することはしません。制度の名称や要件、支給額は改定されますし、最終的な判断は公的窓口の情報に従うべきものです。ここで扱うのは、助成金を自社の採用費用の計算にどう位置づけるかという、経営判断としての整理です。

助成金は「値引き」ではなく、後から入ってくるお金

まず押さえておきたいのは、採用関連の助成金は求人広告の値引きとは性質がまったく違うということです。

求人媒体の割引は、掲載時点で支払額が減ります。一方で助成金は、採用して、一定期間雇用して、要件を満たしたことを書類で示して、審査を通ってから入金されます。つまり支出が先、入金が後という順番になります。しかも対象者の属性や雇用形態、社内の雇用状況など複数の条件が絡み、申請してみたが対象外だった、というケースも起こります。

この構造を踏まえると、助成金を扱うときの原則は次の2つに整理できます。

  1. 採用するかどうかの判断は、助成金がゼロでも成り立つかで考える
  2. 助成金は、入金されたときに採用費用を後から圧縮するものとして扱う

「助成金が出るからこの人を採ろう」という順番になると、定着しなかったときに採用費用も助成金も失うことになります。実際に、雇用継続が要件に含まれる制度では、早期に退職されると支給されない、あるいは減額されるという建て付けのものがあります。助成金の有無より先に、その人に長く働いてもらえる見込みがあるかを見る。順番はここが先です。

採用単価に、どう反映させるか

採用コストの考え方。1人あたり採用単価をどう下げるかでも触れた通り、1人あたりの採用単価は「かかった費用÷採用人数」で出します。助成金を組み込むときは、この式を申請前と申請後の二段で持つのがおすすめです。

以下は仮の数字で置いた計算例です。金額はすべて説明のための架空の数字で、実際の支給額や要件を示すものではありません。

項目仮の金額
求人広告費(3ヶ月分)200,000円
社内工数(応募対応・面接など)80,000円
申請にかかる社内工数30,000円
支出計310,000円
助成金の入金(仮)400,000円
差引後の負担△90,000円

この表で見てほしいのは、下2行ではなく3行目です。助成金の話をするとき、支給額と広告費だけを並べて「実質タダで採用できた」と語られることがありますが、申請そのものにかかる手間は必ず費用に入れてください。

具体的には、対象になるかの事前確認、ハローワークへの求人の出し方の調整、計画書の提出、雇用契約書や出勤簿・賃金台帳の整備、支給申請書類の作成。社労士に依頼すれば報酬が発生し、自社でやるなら管理部門の時間が消えます。この工数を金額に置き換える手順は社長と総務が採用に使っている時間は、いくらのコストかで扱っていますので、同じやり方で見積もってみてください。

また、入金までに数ヶ月から1年以上かかる制度もあります。資金繰りの観点では、支給予定額を当期の採用予算に織り込むのは避けたほうが無難です。「入ったら次の募集の原資にする」くらいの距離感が現実的です。

申請の段取りは、採用フローに先に埋め込む

助成金でもっとも多いつまずきは、金額でも要件でもなく順番です。求人を出す前、あるいは採用を決める前に手続きが必要な制度があり、後から気づいても遡れないことがあります。

この性質があるため、助成金を検討するなら、採用フローの最初の段階に確認ポイントを差し込んでおく必要があります。

なお、ハローワークからの紹介が前提になる制度もあります。紹介状の扱いや窓口経由の連絡の進め方は媒体経由の応募と勝手が違うため、ハローワーク経由の応募は、対応の仕方が違うも合わせて確認しておくと、選考中に書類の不備が生まれにくくなります。

制度の内容や要件は年度で変わります。この記事の情報を根拠にせず、必ず厚生労働省のサイト、または管轄のハローワーク・都道府県労働局、顧問社労士に最新の要件を確認してください。

助成金の前に効いてくるのは、応募後の取りこぼし

もうひとつお伝えしたいのは、助成金の検討と、採用費用の改善は別の話だということです。

助成金は、採用が成立したあとに効いてくるものです。一方で中小企業の採用費用を押し上げている要因の多くは、その手前——応募が来ているのに面接につながらない、連絡が遅れて辞退される、といった歩留まりの部分にあります。ここが詰まっている状態では、助成金をいくら調べても採用単価は下がりません。

たとえば仮に、月10件の応募があって面接まで進むのが2件という会社と、同じ10件で5件が面接に進む会社を並べると、同じ広告費でも1人あたりの負担は大きく変わります。しかも歩留まりの改善は、助成金と違って対象者の属性に左右されず、毎回の募集に効きます。自社の現状を測る方法は面接設定率という指標。応募からの歩留まりを測る第一歩にまとめました。

順番としては、

  1. いま来ている応募を取りこぼさない状態をつくる
  2. そのうえで、対象になる採用があれば助成金を申請して費用を圧縮する

この形が、費用対効果としては素直だと考えています。助成金は歩留まりの穴を埋める手段ではなく、整った採用の上に乗せる補助と捉えるほうが、判断を誤りにくくなります。

手続きを進めるために、対応を止めない体制を

助成金の申請は、書類そのものよりも「採用活動と並行して手続きを進める余力があるか」で成否が分かれます。応募対応と日程調整に追われている状態で、期限のある書類まで抱えるのは現実的ではありません。

社外採用部は、求人・媒体・スカウトなど母集団形成の運用から、応募の受付、初回連絡、日程調整、面接前後のフォロー、内定・入社フォローまで、面接以外の採用実務を社外の採用事務局として引き受けるサービスです。面接そのものと採否の判断は御社が行います。料金は月額49,800円〜、初回設計費100,000円で、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積りします。候補者対応や募集の運用を外に出すことで、社内の管理部門は要件確認や書類整備といった、自社でしか進められない手続きに時間を割けるようになります。

助成金を活かすにも、まず採用そのものが成立していることが前提です。応募対応に手が回らず、選考が止まりがちだと感じている方は、お問い合わせから現状をお聞かせください。サービス責任者の佐々木純平が、どこを社外に出せるかの整理からご一緒します。