面接の時間になっても候補者が現れない。数分後に「すみません、場所が分からなくて」と電話が入る。あるいは、電話すら来ないまま面接の時間が過ぎていく——。こうした場面では、原因が候補者の意欲不足ではなく、単に会社への行き方が分からなかっただけ、というケースが少なくありません。

工場の入口が正門ではなく裏門だった。雑居ビルの4階で、1階に社名の表示がなかった。駐車場が建物から100メートル離れた別区画だった。会社の人にとっては当たり前の道順が、初めて来る人には難問になります。この記事では、当日の迷子が遅刻・キャンセル・第一印象の悪化につながる構造を整理し、そのまま使える案内文の型をご紹介します。

地図リンクだけでは、なぜ足りないのか

面接案内に地図アプリのURLを1本貼って終わり、という会社は多いと思います。ただ、地図リンクが正確に示してくれるのは「建物の位置」までです。候補者が実際に困るのは、その先にあります。

ひとつめは、入口の問題です。地図は敷地の中心にピンを落とします。しかし工場や倉庫では、来客用の入口と車両用のゲートが別だったり、警備室で受付が必要だったりします。ピンの場所に着いても、そこから中に入る方法が分からないのです。

ふたつめは、縦方向の情報がないこと。雑居ビルの場合、地図は建物までしか案内しません。何階か、エレベーターはどこか、フロア案内板に社名が載っているか。テナントの入れ替わりがあるビルでは、古い社名のままの表示が残っていることもあります。

みっつめは、車で来る人への情報です。来客用駐車場の位置、何番に停めればよいか、満車のときはどうするか。「近くのコインパーキングをご利用ください」だけでは、初めての土地では探し回ることになります。

そして最後に、所要時間の見積もりです。「駅から徒歩10分」と書いてあっても、それが最短ルートの数字なのか、初めて歩く人でも10分で着くのかは別の話です。踏切や坂道、大きな交差点の待ち時間が入ると、体感はもっと長くなります。

迷子が「辞退」に変わるまでの流れ

道に迷った候補者の心の中では、短時間でいくつかのことが起きます。

まず、遅刻しそうだという焦りが生まれます。次に、電話をかけるべきか迷います。ここで「電話番号がどこに書いてあるか分からない」「代表番号しか知らない」「面接担当者の名前をうろ覚え」という状態だと、連絡のハードルが一気に上がります。そして、遅刻して怒られるくらいなら行かないほうがいい、という気持ちが顔を出します。

無断キャンセルの理由は当日の迷いだけではありませんが、迷子は「連絡しづらさ」と結びついたときに、そのまま来訪の取りやめへ変わりやすい要因です。無断キャンセル全般の背景と前日までの手当てについては面接の無断キャンセルはなぜ起きるのか。前日までにできる予防策で整理していますので、あわせてご覧ください。

たどり着けたとしても影響は残ります。汗をかいて息を切らし、開口一番に謝罪から入る面接は、候補者にとって不利なスタートです。会社側も「時間にルーズな人かもしれない」という色眼鏡で見てしまいます。実際には案内不足が原因なのに、その評価が候補者に返ってしまうのはもったいないことです。

案内文に入れたい6つの要素

案内文に何を書けばよいか。支援先で標準化するときは、次の6つを揃えていただくことが多いです。

要素書き方の目安
到着地点の特定「◯◯ビル4階」「第2工場の東側 来客用出入口」まで書く
目印「1階が青い看板のコンビニ」など、社名以外の変わりにくい目印
徒歩ルートと所要時間「◯◯駅 北口を出て右手、大通り沿いに直進、徒歩12分」
車の場合来客用駐車場の位置と区画番号、満車時の代替
到着後の動き「インターホンで採用担当をお呼び出しください」まで指定
迷ったときの連絡先担当者名+直通の携帯番号、「遅れても大丈夫です」の一言

特に効くのが、最後の一行です。「道に迷われた場合は、この番号にいつでもお電話ください。少し遅れても問題ありませんので、慌てずお越しください」。この一文があるかないかで、候補者が電話をかけられるかどうかが変わります。連絡してもらえさえすれば、迷子は遅刻で済み、キャンセルにはなりにくくなります。

そしてもうひとつ、写真を1枚添えるという手があります。入口の外観、看板、駐車場の入り口。スマートフォンで撮った写真を1枚メールに貼るだけで、候補者は「この景色を探せばいい」と分かります。文章を10行足すより、写真1枚のほうが伝わる場面は多いものです。撮影は一度きりで済み、以降は使い回せます。

そのまま使える案内文の例

日程確定の連絡に組み込む形で、以下のような文面をひな形にしてみてください。

【工場・倉庫の場合】

◯◯様

面接の詳細をご案内いたします。

日時:◯月◯日(◯)14:00 場所:株式会社◯◯ 第2工場 事務棟(住所)

■ 電車でお越しの場合 ◯◯駅 東口から徒歩15分です。駅前のロータリーを左手に進み、◯◯銀行の角を右折して直進してください。左側に灰色の大きな倉庫が見えたら、その手前の白い2階建てが事務棟です。

■ お車でお越しの場合 正門ではなく、その50メートル先の通用門からお入りください。正門は車両専用で、来客の受付ができません。門を入ってすぐ左に来客用駐車場(3台分)がございます。

■ 到着後 事務棟1階の入口インターホンで「採用面接で来ました」とお伝えください。採用担当の◯◯がお迎えにあがります。

■ 当日ご不明な点があれば 採用担当 ◯◯(携帯:090-◯◯◯◯-◯◯◯◯) 道に迷われた際は、遠慮なくお電話ください。多少お時間が前後しても問題ございませんので、ご安心ください。

(入口の写真を添付しております。ご参考になさってください)

【雑居ビルの場合】

場所:◯◯ビル 4階(住所) 1階が◯◯薬局のビルです。ビル正面の看板には旧社名の「◯◯商会」と表示されている場合がありますが、同じ会社です。エレベーターで4階までお上がりいただき、右手のガラス扉からお入りください。 ※エレベーターは1基のみのため、少し混み合うことがあります。5分ほど余裕をみてお越しいただけますと安心です。

「旧社名の表示が残っている」「エレベーターが混む」といった、社内では言うまでもない情報こそ、候補者にとっては命綱になります。案内文を書くときは、入社1年目の社員に読んでもらい、初めて来た日に困ったことを聞き出すと精度が上がります。

案内は「送りっぱなし」にしない

案内文を作っただけでは効果が半減します。運用として押さえたいのは、次の3点です。

1. 送るタイミングを2回に分ける。 日程確定時に詳細案内を送り、前日にもう一度、要点だけを短く送ります。前日のリマインドは日時と場所、担当者の連絡先の3点で十分です。文面の型は面接前日のリマインドメール例文。送る内容と気をつけたい一言にまとめています。

2. 当日の着信を、誰が受けても取り次げるようにする。 「道が分からない」という電話が代表番号にかかってきたとき、受けた社員が事情を知らないと保留が長引き、候補者はさらに焦ります。誰が出ても案内できる状態のつくり方は誰が電話に出ても同じ対応にする。応募者からの着信の受け方をご参照ください。

3. 迷った人が出たら、案内文を直す。 「あの角が分かりにくかった」という声は、次の候補者への改善材料です。一度作った案内文を一度も更新していない会社は、同じ場所で毎回迷われている可能性があります。

道順案内は、採用施策のなかで最も地味な部類に入ります。ただ、費用はほぼかからず、一度整えれば効果が続く数少ない打ち手でもあります。仮に月に4件の面接があり、そのうち1件が道迷いをきっかけに流れているとすれば、求人広告を1本追加するより先に手を入れる価値のある場所です。


社外採用部は、応募の受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォローまでを社外の採用事務局として担っています。面接案内の文面づくりや前日リマインド、当日の連絡受けもその範囲です。月額49,800円〜(初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積り)で、いまの求人媒体はそのままに、応募後の対応だけを整えることができます。

「案内文を整える時間が取れない」「当日の電話に誰も出られない」といった状態が続いているようでしたら、お問い合わせフォームから現状をお聞かせください。サービス責任者の佐々木がご状況を伺い、どこから手をつけるべきかを一緒に整理いたします。