支店や営業所、工場が複数ある会社で、「あの拠点は採れているのに、こっちはまったく採れない」という話をよく伺います。同じ求人票、同じ給与レンジ、同じ媒体を使っているのに結果が違う。原因を探ろうとしても、どの拠点にいつ何件応募が来て、そのうち何人と連絡が取れたのかが、本社からは見えない。手元にあるのは「最近応募が少ないです」という拠点長の報告だけ、という状態です。

拠点が増えるほど、採用は「募集の問題」ではなく「窓口をどこに置くかの問題」になります。この記事では、応募が届いたあとの連絡をどこが担うのかという一点に絞って、本社集約と拠点完結の分担案を比べ、拠点長が非協力的なときの巻き込み方まで整理します。

拠点に応募が直接届くと、何が起きているか

多くの会社では、求人媒体の応募通知が拠点のメールアドレスや拠点長の携帯に直接届く設定になっています。「現場のことは現場が一番わかっているから」という理由で、そうなっていることがほとんどです。

ただ、この設定には副作用があります。こうした会社で起きやすいことを挙げると、おおよそ次のようなものです。

ひとつは、対応品質のばらつきです。A拠点の拠点長は応募当日に電話をかけ、つながらなければSMSを送る。B拠点の拠点長は週末に月曜の朝まとめて見る。同じ会社の求人に応募したのに、候補者が受け取る体験はまったく別物になります。この差は候補者側から見れば会社の姿勢の差に映ります。

ふたつめは、記録が残らないことです。拠点長の携帯の発信履歴と頭の中にしか経緯がないので、その人が異動や退職をすると、選考中の候補者の状況ごと消えます。

みっつめは、本社が打ち手を打てないことです。応募数が少ないのか、応募は来ているのに面接まで進んでいないのかが切り分けられないため、対策が「もっと広告を出す」に固定されてしまいます。この切り分けについては面接設定率という指標。応募からの歩留まりを測る第一歩で扱っていますが、複数拠点の場合はまず「拠点別に数字が出る状態」を作るところからになります。

本社集約型と拠点完結型を比べる

窓口の置き方は、大きく二つに分かれます。どちらが優れているという話ではなく、拠点数と採用頻度によって向き不向きがあります。

本社集約型拠点完結型
応募通知の届き先本社の共通アドレス各拠点
初回連絡・日程調整本社拠点
面接・見学対応拠点拠点
向いている状況拠点が3つ以上/各拠点の採用頻度が低い拠点が1〜2つ/拠点に事務担当がいる
起きやすい問題現場の実情を知らずに案内してしまう品質のばらつき、記録の不在

判断の目安として、ひとつの拠点で年に数人しか採らないなら、拠点側に応募対応の型が育ちません。年に2〜3回しかやらない作業は、毎回ゼロから思い出すことになります。この場合は本社集約に寄せたほうが回りやすいことが多いです。

逆に、各拠点に事務担当がいて毎月のように応募がある場合は、拠点完結のほうが速く動けます。ただしその場合でも、後述する最低ルールは共通で敷く必要があります。

現実解は「初回連絡と日程調整は本社、面接と受け入れは拠点」

実際に多くの会社で落ち着きやすいのが、工程の途中で線を引く形です。

本社が持つ工程

拠点が持つ工程

この線引きの根拠はシンプルで、前半は「速さと均質さ」が効く工程、後半は「その拠点を知っていること」が効く工程だからです。初回の電話に必要なのは現場の詳しい知識ではなく、その日のうちにかけることと、面接日をその場で決め切ることです。一方、仕事内容の説明や職場の雰囲気は本社が代われません。

この形を機能させる鍵は、拠点から面接枠を先にもらうことです。応募が来てから拠点長の予定を探すと、そこで数日止まります。「毎週水曜の15時と木曜の17時は面接枠として空けておく」といった仮押さえを先に取っておくと、本社は候補者との最初の通話で日程を提示できます。枠の作り方は面接枠が取れない。現場が忙しい会社の面接枠の作り方で詳しく扱っています。

なお、複数の媒体を使っていると、集約するにも通知先がばらけます。複数媒体の応募をどこで一元管理するか。抜け漏れが起きる場所もあわせてご覧ください。

拠点完結でいく場合の、最低限のルール

現場の裁量を残したい、あるいは本社に人を置けない事情があって拠点完結を選ぶ会社もあります。その場合でも、次の4つは全拠点共通のルールとして決めておくことをおすすめします。裏を返せば、ここだけ揃えれば、あとは拠点のやり方に委ねて構いません。

  1. 初回連絡の期限を決める。 「応募当日中」「営業時間外の応募は翌営業日の午前中まで」など、時刻で決めます。曖昧な「なるべく早く」は守られません。
  2. 連絡文面は本社が用意し、拠点は差し替えるだけにする。 拠点ごとに文面を作らせると、品質差と作成の手間が両方発生します。
  3. 記録の項目を統一する。 応募日時・媒体・初回連絡の日時・現在のステータス・次にやること・辞退理由。この程度で十分です。様式は応募者の記録は何を残せばいいのか。最低限の6項目にまとめています。
  4. 本社への報告を月1回・同じ様式で出す。 拠点別の応募数と面接設定数だけでも、比較できる状態になります。

この4つを敷いたうえで、半年ほど拠点別の数字を並べてみると、うまくいっている拠点のやり方が見えてきます。それを他拠点に横展開するほうが、本社が正解を作って押し付けるより定着しやすいと感じています。

拠点長が協力してくれないときの巻き込み方

窓口の設計より難しいのが、ここかもしれません。拠点長にとって採用は本業ではなく、営業数字や現場運営に追われています。「本社がまた仕事を増やしてきた」と受け取られると、面接枠は出てこず、報告も止まります。

有効だったのは、依頼の入り口を「協力してください」ではなく「減らします」にすることでした。本社集約であれば、拠点長に残る作業は面接枠を出すことと面接に出ることだけになります。応募者への電話も、つながらない相手への追いかけも、不採用連絡も本社が引き取ります。この「何がなくなるか」を先に具体的に伝えると、反応が変わります。

もうひとつは、欠員のコストを拠点長自身の言葉に翻訳することです。たとえば仮の数字で、欠員1名のまま月20時間の残業が他のメンバーに乗っているとすると、それは拠点の人件費と現場の消耗に直結します。採用対応が遅れて候補者を逃すことは、本社の都合ではなく拠点の負担が続くことだと共有できると、面接枠の提供は「本社への協力」から「自分の拠点の問題解決」に変わります。

そのうえで、進捗は必ず拠点長にも共有してください。応募が来ていること自体を現場が知らないと、面接も見学対応も雑になります(現場が「採用してるの知らなかった」を防ぐ。社内共有の最小ルール)。


複数拠点の採用がうまくいかない原因は、拠点長のやる気ではなく、窓口の設計にあることが少なくありません。初回連絡と日程調整という「速さが効く工程」を一箇所にまとめ、面接と受け入れという「その拠点でしかできない工程」を現場に残す。この線引きだけで、拠点間のばらつきはかなり落ち着きます。

とはいえ、本社にその一箇所を担う人を置けない、というのが中小企業の実情かと思います。社外採用部は、全拠点分の応募受付から初回連絡、日程調整、面接前後のフォローまでを外部の採用事務局として引き受けるサービスです(月額49,800円〜、初回設計費100,000円、以降は支援内容・工数に合わせて個別にお見積り)。拠点ごとの通知集約と面接枠の設計から一緒に組み立てます。

自社の場合はどう分担すべきか整理したい、という段階でも構いません。ご相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。