歯科衛生士や歯科助手、医療事務、看護師の求人を出したものの、応募があったことに気づくのが診療後になってしまう。ようやく夜に電話をかけると、今度は相手が出ない。翌日の昼休みにかけ直すと留守番電話、そのまま数日が経ち、気づけば「他院に決まりました」という返信が届く——。小規模な医院で採用を担っている院長から、こうしたお話をよく伺います。

これは院長の努力不足ではなく、時間帯の構造の問題です。医院の採用には、他業種にはない「双方が電話に出られない」という特有の事情があります。ここを仕組みで越えないかぎり、何回求人を出しても同じところで止まります。

院長も応募者も、日中は電話に出られない

まず、すれ違いの正体を整理します。

院長は診療時間中、患者さんの前にいます。チェアやユニットに入っていれば電話は物理的に取れませんし、途中で抜けることもできません。診療の合間があっても、そこはカルテ記載や次の患者さんの準備に消えていきます。実質的に自分で電話をかけられるのは、昼休みの後半と診療終了後の1時間程度、というのが多くの医院の実態ではないでしょうか。

一方、応募者の側も同じ構造の中にいます。歯科衛生士や医療事務の求職者は、多くの場合いま別の医院やクリニックで働いています。つまり相手も日中は診療の中にいて、スマートフォンを見られるのは昼休みか、勤務が終わったあと。転職活動をしていることを職場に知られたくないので、休憩室で電話に出ることもしません。

結果として、双方が動けるのは「昼休み」と「診療後」という細い時間帯だけになります。しかもその細い時間帯すら、休診曜日や学会・往診の予定でずれていく。応募から初回接触までに数日かかるのは、ある意味で当然の帰結です。

しかし応募者から見れば、事情は関係ありません。近隣の複数の医院に同時に応募していれば、先に連絡が来て、先に面接日が決まったところへ話が進みます。応募後1時間以内の初回連絡が、採用の歩留まりを変える理由でも触れていますが、初動の遅れはそのまま応募の目減りになります。

受付スタッフに「どこまで」を渡すか決めておく

院長が診療から抜けられない以上、日中の一次対応を受付スタッフに渡すしかありません。ただ「応募が来たら対応しておいて」では、スタッフも困ります。合否や条件の話に踏み込めない立場だからです。

渡すのは判断ではなく、事実の受け渡しと段取りだけにします。具体的には次の線引きです。

受付スタッフが日中に行うこと院長が診療後に行うこと
応募通知の確認(1日2回、開院時と昼休み)面接するかどうかの判断
応募御礼と「本日◯時以降にご連絡します」の一次連絡応募者への電話・面接の実施
応募者からの着信の受け、名前と連絡可能時間の記録給与・勤務条件の最終回答
事前に確保した面接枠の中からの日程提示見学や既存スタッフとの顔合わせの設定

ポイントは、一次連絡の内容をあらかじめ文面として決めておくことです。「応募ありがとうございます。院長より本日18時以降にお電話いたします。ご都合の悪い時間帯があればこのメッセージにご返信ください」——この一文をSMSかメールのテンプレートとして登録しておけば、受付スタッフは判断せずに送れます。

そしてこの一次連絡には、もうひとつ効果があります。応募者は「知らない番号からの着信」を取りません。先に医院名と連絡予定を伝えておけば、夜の着信が「あの医院からだ」と分かるようになります。電話が取れない時代の連絡順については、応募者に電話がつながらない。SMS・メールを組み合わせた連絡の順番にまとめています。

折り返す時間帯を、こちらから先に決めて伝える

「都合のよい時間を教えてください」と聞くと、返信を待つ時間が発生します。相手が現職中であればなおさら、返信は夜になり、そこから調整でまた一往復。この往復のたびに一日が消えます。

先に決めてしまう方が、双方にとって早く終わります。たとえば「平日18:30〜19:30」と「木曜の13:00〜14:00(午後休診)」を医院の連絡枠として固定し、応募者には「この2つのうちご都合のよい方をお知らせください」と提示する。選択肢が2つなら、応募者は考えずに返せます。

固定した枠は、受付スタッフとも共有しておきます。応募者から日中に着信があったとき、「院長から本日18時半にご連絡します」と即答できる状態が理想です。

面接枠は、診療スケジュールに先に埋めておく

医院の採用でもっとも詰まりやすいのが、面接日の設定です。診療スケジュールは患者さんの予約で先に埋まっていきます。応募が来てから「いつ面接しようか」と考え始めると、空いているのは2週間先のアポイントの谷間、ということになりがちです。

これを避けるには、求人を出す前に面接枠を先に押さえてしまうことです。仮の例ですが、次のような組み方が考えられます。

先に枠をとっておけば、応募が来たその日に「今週金曜19時か、来週木曜14時でいかがですか」と直近の日程を出せます。面接日が近いほど、候補者の熱量が保たれたまま当日を迎えられます。逆に2週間先になると、その間に他院で決まってしまう。日程調整が空中分解する構造については、中小企業の面接日程調整が空中分解する理由と直し方で詳しく整理しています。

もうひとつ、医院ならではの工夫として、面接に「見学」を組み合わせる方法があります。歯科衛生士や医療事務の応募者が知りたいのは、実際のユニット数や器材、スタッフの人数と年齢層、休憩室の様子といった具体です。診療の終わりがけの時間に来てもらえば、片付け中の院内を自然に見てもらえます。面接だけよりも、判断材料が増えた分だけ入職後のミスマッチも減ります。

応募後の対応だけを、外に出すという選択

ここまでの内容は、突き詰めれば「診療中に空いている手を、どこかに用意する」という話です。受付スタッフに余力があれば任せられますが、患者対応とレセプトで手一杯という医院も少なくありません。応募のたびに受付を止めるのが現実的でないなら、その部分だけを医院の外に置く方法があります。

私たちが提供している社外採用部は、応募の受付・初回連絡・日程調整・面接前後のフォロー・入職までのフォローを、医院に代わって行う採用事務局です。診療時間中に届いた応募にその場で一次連絡を入れ、あらかじめ伺っている面接枠の中から日程を確定させて、院長には「◯月◯日19時に面接1件」という結果だけをお渡しします。求人広告そのものの運用は行いません。応募が来たあとの、いちばん時間に追われる部分を引き受けるサービスです。

料金は月額49,800円からで、初回に設計費として100,000円をいただきます。診療スケジュールや連絡枠、面接に進める基準はこの設計段階で伺い、医院ごとの型をつくります。

応募は来ているのに面接まで進まない、という段階で止まっているなら、求人の出し方より先に見直せる余地があります。自院の状況をお聞かせいただければ、どこで止まっているのかの整理からご一緒します。お問い合わせはこちらからどうぞ。サービス責任者の佐々木がお話を伺います。